デジタルマーケティングのキーとも呼べるデータ統合と活用、そのデータインフラとなるのがカスタマーデータプラットフォーム、CDPです。
今回はそのCDPの役割と活用方法を解説していきます。
2020年から急加速するBtoB企業のデータ活用
CDPの役割に入る前に、2020年コロナ禍から急加速し始めたBtoBマーケティングにおけるデータ活用に関して触れたいと思います。
マーケティングと営業の役割と保有するデータはテクノロジーの進化と顧客の購買行動の変化に伴い、常に変化してきました。
マーケティング部は広告施策、WEB施策、リード獲得施策を通して「見込み顧客の行動を知っている」役割、つまりは顧客の行動データを保有を主に保有しています。一方、営業はお客様のもとに訪問をして顧客の課題やニーズ、いつ自社製品サービスを購入するか、予算、意思決定フローなどの「顧客の考えを知っている」役割、顧客のBANTデータや案件情報を保有しています。
それぞれのデータはマーケティングはMAツール、営業はSFAもしくはCRM上で管理されています。
2020年以前はマーケはリードデータをMAツールに投入し、コンテンツをカスタマージャーニーに沿ってメールやセミナーで展開して、見込み顧客の反応が一定の閾値を超えると営業にパスをする。営業は受け取ったリードに訪問をして、ヒアリングを実施して信頼関係を気づいて受注を取りに行く。ということでマーケと営業で明確に役割が分かれているのが一般的でした。
しかしながら、コロナ禍で展示会が全てキャンセルになり、営業の訪問も制限されるようになり、顧客接点の中心がWEBやウェビナーなどのオンラインにシフトをしていきました。それにより、マーケティングに求められる役割に「顧客の考えを知る」という点も追加されるようになり、マーケと営業の垣根にも変化が訪れ、コミュニケーション面でも、データ面でもより垣根を越えた密接な連携が売上をあげるために必要になりました。
元々マーケと営業は役割が明確に別れていたので、バラバラにMAツールでお客様の行動履歴情報、CRMツールでお客様の考え、BANT情報、案件情報を管理してきましたが、アフターコロナの時代に競合優位性を保つためには、それらの情報を統合して運用し、より顧客の解像度をあげた上で、マーケと営業がそれぞれの活動をすることが重要になったのです。
そこで注目を集めるようになってきたのが、カスタマーデータプラットフォーム、CDPになります。
ここからは本題である、BtoBのマーケティングで活躍するCDPの役割をまとめていきたいと思います。
CDPはデータを統合する箱
カスタマーデータプラットフォームという名前の通り、CDPはあらゆる顧客データを、ほぼ無制限に一箇所にまとめることができる箱になります。
MA、CRMはプラットフォームの特性上、保有できるデータ量に制限があったり、データを持てる形にそれぞれ制約があります。
例えば、MAツールのマルケトの場合、保有リード件数が増えるほど課金されると同時に、90日以内のアクティビティしかターゲティングに使えない。CRMのセールスフォースの場合も自由度が高いものの、営業のデータの入れ方によっては議事録形式で顧客対応情報が記載されている場合ターゲティングに使いにくい構造になっているという場合があります。
特性の違うMAやCRMのデータ、さらにはWEBの検索履歴、コールセンターのコール履歴、動画の視聴履歴、セミナーやウェビナーの参加履歴などあらゆるデータを一括で取り込むことができるのがCDPの特徴です。
取り込んだデータを加工し、整形してあげることで、データ活用の幅が広げることができます。さらに詳しくCDPの活用利点を話していきたいと思います。
CDPでできること
1顧客、ID化することで顧客理解の解像度をあげる
まず最初にCDPでできる重要な点として挙げられるのが、MAツールの顧客行動履歴、CRMの商談・案件情報、動画プラットフォームの視聴履歴、Excelのセミナー参加情報などを統合し、1名一つのIDで管理しすることで、全てのデータを横断的にスムースにアクセスできるようになります。
それぞれのデータはメールアドレスや、Cookie情報、会員IDをキーに紐づけます。またBtoBの場合は会社情報も会社IDで管理します。
統合したデータをもとに行動履歴、自社のアクション情報を時系列に整理してあげることで、顧客解像度をあげることができ、精度の高いスコアリングや、MAやCRMに最適化されたセグメンテーション情報を返したり、WEBパーソナライズやインサイドセールスの高度化や顧客分析の精度をあげることが可能になります。
時系列にデータを整理
いつどの見込み顧客が、自社のWEBサイトのどのページをみて、どのセミナー・ウェビナーに参加したのか、そしてインサイドセールスからいつ電話をしてヒアリングを行い、いつ営業が訪問して売上になったのか、それら全ての「いつ」「何を」を時系列データとしてCDPで整理することが可能です。
これまでMAツールやCRMで別々に管理をしていた際には、スコアリングやパーソナライズもそれぞれで持っているデータのみでしか対応ができませんでした。
時系列データを統合することで、製品サービスの売上げに至るまでに誰がどのような動きをしたのかの詳細がわかります。これが顧客理解の解像度を上げるということにつながります。
瞬間風速的な見込み顧客の動きを見逃さない
カスタマージャーニーはどんなに作り込んだとしても、そのシナリオ通りに顧客が動くことはありません。広告から自社のWEBに入ってきたユーザーが1日で契約に結びつくこともあれば、1年かかることもあります。営業をかけて、営業の感覚では受注確実にも関わらず、失注してしまうということはBtoBの製品サービスの現場においては日常茶飯事です。
そんな中において見込み顧客の検討シグナル、具体的にはWEBページを複数見たり、資料をダウンロードしたり、動画を閲覧するなどの急激なアクションの増加や反応の深さをあらゆる観点で捉えることが重要になってきます。
これも1顧客1IDかつ時系列でデータを保有していることで、バラバラにデータを保有しているときと比べて、素早く、正確に見込み顧客の状態を特定することができます。
データをアプトプット
データをアウトプットするのは単にCSVファイルやBIツールのようにグラフ化するだけでなく、広告やMA、CRM、チャットアプリ、WEBポップアップや分析ツールなどと容易に連携することができます。
カスタマーデータプラットフォームのサービス展開のリーダーであるTreasure Data CDPの場合、施策へのデータ連携はWEBベースのインターフェース上で簡単に行うことがでます。
マーケターでも少しのトレーニングを受けるだけでデータ接続ができ、「セミナー来訪可能性高」「案件直前」「受注まであと一押し」の顧客に広告や、プッシュ、メール、WEBパーソナライズなどを高度化されデータによって可能になります。
まとめ
カスタマープラットフォーム、CDPはバラバラになっている見込み行動履歴やコール、営業履歴などの自社のアクションを統合して、高度な顧客理解と科学的なナーチャリング、PDCAのスピードアップを可能にします。
BtoBビジネスにおいて営業の感覚に頼って売上げを上げてきたビジネスは、CDPを導入し、サイロ化しているデータを統合し「営業の感覚を可視化し、仕組み化」することで、会社として売上を上げる仕組み作りが可能になります。今まで売上を上げることに伸び悩んできた営業も売りを上げられるようになり、会社としてのパフォーマンスを飛躍的にあげることになるでしょう。
BtoBにおけるCDPの活用はこれから本格化していくので、情報収集をしながら自社にあった選択をしていくとよいでしょう。
ただ、データを扱い示唆を得られるようになるにはそれなりに時間がかかるので、投資するお金とリソースと時間が必要なことは覚悟しておく必要があります。
一つ山を乗り越えると、データをもとにビジネスを改善する好循環を生むことが出来るようなるでしょう。
おすすめの本
より詳しくCDPを活用して顧客体験を向上させる手法を知りたい方におすすめ