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エージェンシーのフィーとコミッションの違いとポイントをクライアントと考えてみた

クライアントとエージェンシーフィー(作業報酬制)とコミッション(手数料制)の違いとそれぞれの良さ、悪さを議論をしました。外資系のクライアントの方との会話でふとした時にこの会話になりましたが、突き詰めて考えてみると面白いなと思ったので整理したいと思います。

フィーとコミッションの違い

広告代理店、マーケティンエージェンシーで仕事をする中でクライアントとの契約形態は主にフィー(作業報酬制)コミッション(手数料制)に分かれます。クライアントによってどの契約形態を望むかは分かれるの、普段意識して仕事をすることは少ないのではないかと思います。

広告代理店は1800年ごろのイギリスで、新聞広告枠を広告主の代わりに購入し手数料を取ったことから始まったと言われています。つまりは広告代理店の成り立ちは広告枠の卸売から始まったのです。そのため基本的な広告代理店のビジネスモデルはクライアントの希望するテレビや新聞、雑誌、屋外広告の枠を代理で抑え、その手数料=コミッションを得るのが1990年代までの主流でした。

しかしながら2000年代以降インターネットの発展により顧客の選択の自由度が増すと同時に、広告を出せば売れるという時代が終焉しました。自社の製品やサービスを継続的に販売するには、市場の中で激しい競争を勝ち抜き、優れたマーケティングを展開する必要性が出てきました。それにより、広告手法の複雑化していき、特に米国では広告代理店・エージェンシーに加えコンサルティング会社もマーケティング領域にまで拡大してきました。元々コンサルティングの課金モデルはかかった工数(使った頭脳)=フィーを請求するモデルでした。コンサルティングのモデルがそのまま広告代理店にも波及し、ただ単に広告の枠売りから製品やサービスを売るための戦略構築から、仕組みづくりを広告代理店は担うようになりました。

フィーのメリットデメリット

広告代理店がフィーモデルを採用する多くの場合は、上流のマーケティング戦略の設計やキャンペーンのディレクション料やクリエイティブのデザイン料、コピー作成料、BtoBのビジネスの場合はメールマーケティング作成、運用型広告、データ管理料、などの作業や人件費に利用されます。

広告代理店がフィー制を採用するメリットとデメリットを見ていきましょう。

メリット

工数課金のため利益を取りやすいのが特徴です。フィーの提示価格はプロジェクトに関わる人材のスキルから算出した時間単価×時間で決定されます。プロジェクトの開始時に仕事の要件を定義して、上記の式に基づき見積もりを行います。プロジェクトを進行し見積もり通りの工数で納品を行えばそれで終わり、当初想定していた要件から仕事が広がれば再度見積もりを行い増えた分の工数を請求するというモデルです。

広告代理店の仕事は想定できないことが起こることはよくあります。納品直前となった動画のクリエイティブがクライアント役員のNGが出て再度制作するといったことです。フィーのモデルの場合このような場合でも期間が伸びればその分の工数を請求することができるので、不意のプロジェクト延長でも営業工数を気にする必要はありません。

デメリット

そもそも日本のクライアントの方で、フィーモデルに対する理解があるところが少ないのが現状です。戦略設計や企画は考えてみると「なんだそんなことか」と思うことが多く、「自分たちでも考えられた」と思うこともありそれに対してコストをかけようという判断が下されることは少ないです。

なぜ米国ではフィー制が浸透しているかというと、当たり前のことをやってもらうということは認識した上で、自分たちの手を開けて何か別のことに力を注ぐためにフィーを払って解決をしているのです。

フィー制をうまく活用するにはクライアント組織内でのリソースと持っている人材のスキルと役割分担が明確である必要があります。リソース配分をする中で足りないスキルやリソースを外部(広告代理店に)にフィーで委託することになります。広告代理店側からすると、クライアントのマーケティング戦略や戦術の状況、人やお金のリソース事情も把握し、チームづくりのために必要な人的リソース配置を提案することが必要です。

また、フィー制を取る場合手数料ビジネスとは違い、人の工数が売り物になります。広告会社はスキルを持った人材を確保し続けている必要があります。人材の育成にはコストもかかりますし、新人の段階からフィーを取ることは難しいので中堅以上の社員と一緒に動く必要もあり、効率は悪く、スケールをさせにくいモデルになります。また、コミッションと比べると工数課金なので思ったよりも利益が多くなるといったことは少なくなります。

コミッションのメリットデメリット

一般的にコミッション制をとっている場合、かかった実費(媒体費や制作費など)に対して10%、15%を「管理費」や「手数料」という名目で上乗せする制度のことです。

メリット

広告会社にとってコミッション制のメリットは予算規模が大きければ大きいほど粗利が拡大するモデルということです。たとえば、1億円のメディア予算に対する手数料が10%の場合、広告代理店の粗利は1000万円。10 億円の予算の場合では1億円といった具合になります。

デメリット

予算規模が小さい場合、工数が多い割には粗利が小さくなります。テレビCMで10億の案件とネットの動画広告100万円の案件でそれぞれの広告手配する工数はそこまで変わりませんが、粗利では1億か10万円と大幅に粗利額が変わってきます。予算規模が小さい場合はフィー制の方が粗利額を確保できる可能性があります。

オープンとクローズドなコミッションモデル

またコミッション制には媒体費や制作にかかった実費を全て開示するオープンなモデルと、実費を開示しないクローズなモデルが存在します。

オープンなモデルの場合クライアント企業からすると、実費が丸裸でわかるため媒体や制作会社にいくら払い、広告代理店に収益がどのくらい渡るのかが明瞭です。

クローズドなモデルな場合クライアントに費用内訳はほとんど開示されないため、どれだけの費用が実際の媒体や制作会社に使われた広告費なのか不透明になります。

クライアント企業からするとオープンなモデルが良いと感じると思います。しかし、広告代理店内ではあらゆる調整仕事があります。想定していたコストで制作が収まらなかった、納期を遅らせないためにお金を積んだ、後から要望が変わりタレント費が上乗せになることになった、などが発生した場合にはお財布の中でやりくりをしています。

もしオープンなモデルの場合、毎度費用のやりくりが発生する度に費用をチャージされて高額になるか、予算調整のすり合わせのため打ち合わせを多くすることになります(通常これをやり始めるとプロジェクトがどんどん遅れます)。

自分の利益しか考えない広告代理の人間を除き、通常はクライアントのビジネスのために仕事をしているので、信頼を置ける広告会社には費用やりくりを任せ、定期的に大まかな明細を確認しあまりにも依頼内容と釣り合っていない仕事がないかをチェックするというハイブリッドなモデルが双方にとって工数もかからず良いモデルと言えるでしょう。

まとめ

コミッションとフィー制は手数料モデルか、かかった実費工数モデルかの違いですがそれぞれクライアント側、広告会社側にとってケースによりメリットデメリットが存在します。

結論どちらが良いというものでなく、仕事の内容や予算規模、双方の関係値によって最適なモデルを選ぶことが良いでしょう。

広告会社はクライアントに対して、売上げに貢献するためにきちんと仕事をして対価をもらう必要があり、広告主も安く値切って広告会社を絞るのではなく、Win-Winなパートナーシップをしっかりと築くことが本質的に重要なことと感じます。


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