BtoBのマーケティング施策を成功に導くにあたって、計画段階において重要なことがカスタマージャーニーの設計です。というのも、従来は製品やサービスの導入際に比較検討のための情報収集を、顧客が営業担当に問い合わせて行っていました。しかしながら現在では、企業の購買プロセスは変化しており、営業担当に問い合わせをする前に、WEB上で製品、サービス情報を検索し比較検討を終えてから問い合わせをするケースが増えています。
この購買プロセスの変化に対応するために重要なのが、カスタマージャーニーの設計とそれに合わせたコンテンツの展開です。
本記事ではカスタマージャーニーを誰もが設計できるよう噛み砕いて説明をします。
カスタマージャーニーとは?
カスタマージャーニーは顧客の購買プロセスを見える化することです。それは、企業内での製品•サービスの導入担当者の行動、気持ちの変化を可視化することです。
カスタマージャーニーを言い換えると、見込み顧客を理解してその動きを書き出すことです。見込み顧客がどのような課題を持ち、普段は何を調べ、どのように自社の製品サービスを知り、どこで比較検討をして、購入をするのかを徹底に考え可視化したものが「カスタマージャーニーマップ」となります。
作成手順
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1顧客を明確にする|ペルソナを作成
カスタマージャーニーを作成する上で重要になるのが、お客様像をはっきりと特定することです。このフェーズさえ出来ると後の工程には時間はかかりません。裏を返すとこの工程が1番難しく、時間がかかります。
やること自体はシンプルです。ターゲットとなる顧客の人物像を細かく設定します。具体的には、ターゲットの人物の所属する企業、業種、職種、その業界や職種のビジネスのトレンド、普段の業務、抱えているであろう課題、何を直近で解決したいと考えているのかを整理します。
人物像はできる限り具体的にすることが重要です。想像しやすくするために家族構成や趣味、休日の過ごし方も考えることもあります。ドラマの主人公を仮想でつくるようなことをして、感情移入をしやすくしています。なぜ感情移入までも必要なのかと言うと後に、記事コンテンツやセミナー内容に落とすにあたって感情まで想像出来ると、ターゲットに刺さるコンテンツを展開しやすくなるためです。
ペルソナを考える上で貴重な情報源となるのは、すでにお客様となっている企業、その担当社の方からヒアリングをすることです。すでに自社の顧客であるので、なぜ自社の製品を導入したのか、何に課題を抱えていたのか、普段の業務や性格的までも見えてくるでしょう。
これから新しく売り出す製品やサービスの場合は、無料体験によるモニター調査やインタビューなどを実施して、「なぜ自社の製品に興味を持ったのか」「普段の情報収集方法」「どのように比較検討をしたか」「導入の意思決定フロー」「導入に際してハードルとなること」などをヒアリングすることでターゲット像を明確にできます。
このフェーズが最も重要なので、多くの社内の人間を巻き込みながらペルソナの作成はしましょう。自社のビジネスをよく知るマネージャーやトップ営業の意見やサポートを得られると良いでしょう。
参考
ペルソナを作成する上で顧客理解が重要です。ジョブ理論は顧客理解に重要な、人が製品•サービスを購入する背景を論理的に説明をしています。ペルソナを作成に重要なヒントがたくさん詰まっていて一読することをお勧めします。
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2製品•サービスの導入プロセスを可視化する
ターゲット像を明確にした後には、そのターゲットが自社の製品やサービスを購入するまでのプロセスを以下の段階に分けて作成します。
購買プロセス
- 課題の認識
- 情報収集
- 解決策の模索
- 製品•サービス認知
- 比較検討
- 購入
簡単にクラウド会計ソフトで購買プロセスを作成した場合の例を記します。ターゲットは企業経理担当者マネージャーの42歳妻子あり。毎日往復3時間かけて出勤している。会社は最近になって働き方改革を推進していて残業が規制されるようになった中小企業の製造業としましょう。
課題認識
会計ソフトは自社独自で開発したもので10年前に開発をしたもので、社外からのアクセスはもちろん、限られたパソコンでしか入ることができない。これまでは業務が忙しい時は夜中まで残業をしてなんとか凌いでいたが、働き方改革の推進によって22時までしか残業ができなくなってしまった。さらに業務量は減るどころかむしろ増えているし、既存の会計システムが現在の業務に対応しきれていない。
情報収集
業務量を分散するためにも、繁忙期に一時的に会計業務を外注できるようにしたい。そのためには社外からでもアクセスできる会計システムが必要で探している。ただ売上や原価のデータを収集するために自社のシステムと繋ぐ必要があるので、新たに開発が必要なのかを知りたい。メディアの記事でまずは会計ソフトやサービスのトレンド情報を収集しよう。
解決策の模索
最近は、色々なサービスや製品が増えていて何が自社にとって最適なのかを検討するために、インターネットの検索で会計ソフトやシステム会社、クラウドサービスを具体的に調べよう。
製品•サービス認知
社外からでも手軽にアクセスが可能で、経理リソースの柔軟な増減に対応でき、自社のシステムに接続できそうなのどうやらこの2社のクラウドサービスと一から開発するのが手段のようだ。最終的には使い勝手の良さと価格、アフターサービスの良いところにしよう。
比較検討
それぞれのサービスを営業担当から説明してもらい、クラウドサービス2社はデモをしてもらった。どのサービスも社外アクセスの要件は満たしているが、まず一から開発は柔軟性は高いが費用も高いのでなし。残る2つのクラウドサービスを比較すると1社が導入後も経理業務のアドバイザリーを手配することが可能でサービス面で優れているので、個人的にはこちらにしたいが、価格がもう1社と比べるとネック。
購入
最終的には2社のクラウドサービス両方を経営陣に提案し判断をしてもらうことになった。自分の推しのサービスは営業担当に社内説明用の資料もすぐにもらうことができプレゼン資料に入れることができた。結果的に自分の推しのサービス導入が決定された。
上記の例のように一連の購買プロセスを明文化します。そうすることによって、自然とどの段階でどのような情報提供を何でしていくことが良いのか、見えてくるようになります。
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3購買プロセスに必要なアクションとコンテンツを置いてみる
カスタマージャーニーマップ作成の最後の段階です。検討した購買プロセスの各フェーズに自社の情報をどの方法で、どのタイミングで発信していくかを置いていきます。
先程の会計クラウドサービスを再度例としてあげます。
情報収集のフェーズではメディアを使い「経理の生産性」「経理業務のトレンド」「経理の働き方改革」などをテーマとしたお役立ちコンテンツを集客用に展開します。集客コンテンツから自社サイトに誘導をかけて、製品情報から自社のサービス認知を図ります。比較検討をしてもらいやすくするために、できる限り価格情報を明示してデモへのスムースな誘導動線をWEBサイト上で設計します。そして営業にはセールスツールとして他社との機能比較や特別なオファー、社内説得用の資料を提供していつでも出せるように用意をするということが考えられます。
このフェーズはどのタイミングで、どのコンテンツを、どのように見込み顧客にあてるかを考えるものです。実際にやってみないと思い通りにならないこともあるので、最初は考えすぎず、複雑にしすぎずにスタートして結果を見ながら調整をしていくことをおすすめします。
まずは作ってみよう
とにかくカスタマージャーニーマップの作成に着手してみましょう。商材やサービスによっては、購買プロセスが複雑で作成しにくいものなども出てくるでしょう。ただこれを考えることが、顧客理解につながり製品やサービスの購入につまづいている場合、どこがボトルネックになっているのか新たな気づきを得られる場合もあります。そこから新たな顧客との接点の持ち方、コンテンツの展開の仕方を思い浮かぶこともあるかも知れません。
ジャーニーを考えるにあたって重要なことは、旅行の計画を立てるのと同じで販売する側のことは一旦忘れ、純粋に顧客の視点に立って作成をすることが重要です。お客様の視点に立った時に製品•サービスの販売に無理がある場合には、そもそもの販売戦略やターゲットの見直しが必要ということもあります。
誰もが腹落ちするようなカスタマージャーニーマップができた時には気持ちいいですし、必ずビジネスに貢献するアクションを取れるようになります。ぜひ良いカスタマージャーニーマップを作成して、ビジネスを発展させましょう。
参考
カスタマージャーニー作成の実践に役立つ本のご紹介です。より具体的な手法が紹介されていて、自社の製品に置き換えて自社内でワークショップをしながら検討するのに役立つ本になっています。