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今日から実践!BtoBマーケティング ーABMの構築手法ー

ABM、アカウントベースドマーケティングは昨今、BtoBマーケティングの考え方の中注目を浴びるようになった考え方です。考え方は2000年ごろに出てきたものですが、テクノロジーの発展と時代の変化により注目を浴びるようになりました。

とにかくリードを大量に獲得し、そこからナーチャリングを実施して購買に繋げる数が勝負のデマンドジェネレーションの考え方から発展をしたのがABMです。

今回はそのABMについてBtoBマーケティングに携わる方に知っておいてもらいたい内容をご紹介していきます。

ABMとは?

ABMは英語のAccount Based Marketing(アカウントベースドマーケテイング)の頭文字から取られた略称で、アプローチ先の企業を絞ることでまーーケティングリソースを集中させ、顧客に合わせた質の高く最適化された施策を実行するマーケティング手法です。

冒頭でも述べたように、ABMでも最近注目を集めるようになりましたが、全く新しいマーケティングの考え方ではありません。また、ABMの前のに注目されたマーケティングオートメーション、MAは日本のビジネスにはマッチしずらく発展が本場の米国と比べると遅れましたが、ABMは日本のビジネスにマッチする考え方と言え、昨今急速に日本で注目を集めるようになったのはこのためです。

デマンドジェンとABMの違い

ABMを詳しく説明する前に、デマンドジェネレーションとABMの違いを正確に理解している必要があります。最終的なゴールは購買、売上を上げることですが、プロセスに違いがあります。

デマンドジェネレーションは先にも示したように、リード獲得、リードナーチャリング、リードの精査の一連のプロセスをまとめたものの総称です。1992年から米国を中心に発展をしたデマンドジェネレーションは企業の「個」特にDMU、ディシジョンメイキングユニットと呼ばれる決定権を持つ個人にフォーカスを当てて、リード獲得、リードの育成とその精査を自動化させることを目的に発展しました。マーケティングオートメーションが活発となったのもこの流れによるものです。

しかしながら、「個」に着目をするこのデマンドジェネレーションの方法は製品やサービスの導入決定を1人の意思決定者が行う場合よく機能をしましたが、日本のビジネスのように製品やサービス導入の意思決定までに社内会議や稟議を経て複数人の登場人物が出るようなビジネスにはなかなかマッチしませんでした。日本でマーケティングオートメーションが注目を浴びるようになったのは2005年以降で、米国で注目を集めてから時間がかかったのもこのためです。

一方ABMは「企業」に着目をしたマーケティング手法で、見込み顧客1社1社ごとの製品サービスの選定プロセス、意思決定方法のプロセスに合わせたマーケティング施策を展開します。ABMの登場前は、「個人」の動きと「企業」の動き両方を捉え施策を出し分けることがテクノロジー面でできませんでした。MAツールやSFA、CRMツールの発展により、きめ細やかな企業情報、顧客の個人情報、行動履歴や販売情報を蓄積し施策に活かすことができるようになったために、ABMは急激に発展しています。

また日本の複雑な購買、意思決定のプロセスに合わせやすくなったこともあり、ABMの考え方が国内でも急激に広まるようになってきたのです。

実践までのプロセス

ここからはABMを実践に移すまでの流れをご紹介します。

ABM開始までの流れ

  • ゴール設定
  • ターゲットリストの作成
  • 顧客攻略シナリオの作成
  • 施策展開案の作成
  • 利用ツールへの落とし込み
  • アクションの開始

ゴール設定

ABMによるゴール設定はデマンドジェネレーションを実施する際に立てるものと同じように、マーケティング投資に対して営業や売上貢献をどれだけ上げるのかをもとに決定をします。

具体的に「〇〇製品を年間で50社導入に貢献をする」「半年間にマーケティング発掘案件を100件営業にパスをする」といったゴール設定を行い、営業チームとの合意を得ます。

ターゲットリストの作成

ABMにおいて最も肝となる部分でもあるターゲット企業リスト作成は、既存顧客の企業規模や売上高、業界業種の情報をもとに考えたり、製品、サービスを導入させたい新規顧客の情報をもとにセグメンテーションを行います。

ターゲットとする企業数はどのくらいが適切かと聞かれることが多いですが、製品やサービスの特徴、単価、対象業種によってもまちまちです。私が担当する中でリスト数のレンジとして多いのは、数千社から数万社です。日本には大企業、中小企業合わせて約400万もの事業社があり、大企業で約2万社程度と言われていますから、リスト数は多くても日本の全事業社の1%ほどです。

あまりにもターゲット企業数が多すぎると、メッセージや施策の軸がぶれますし、投資金額も多くなります。また小さすぎても、ビジネスへの貢献にならないのです。

さらに対象企業を決めた後は、優先度を分けると良いでしょう。ティアー(Tier)という考え方をすることが多く、Tier1からTier3に分けて顧客管理をすることで、さらに投資の優先づけができます。

Tierの分け方

  • Tier1 優先顧客:とにかく積極的に製品サービスを導入させたい企業(多いのは大企業)。こちらからプッシュでアプローチをして、広告やリード獲得施策の積極的な実施、DMやメールを送付する対象
  • Tier2 準顧客: 製品サービス導入してもらいたい顧客(多いのは導入規模が不明な顧客)、予算がつけられる場合にはリード獲得施策、広告施策を実施する。通常は既存リードへのメールアプローチ中心。
  • Tier3 優先度低顧客: こちらからのアプローチはしないが、製品サービス導入してもらいたらよい顧客。投資はしないが、WEBの問い合わせやデモ依頼があった場合に営業にパスする対象。この対象特別に施策は実施しないが、メルマガの配信対象として温め続ける。

わかりやすいように、土木建築業にBIMソフトを売るソフトウェア会社を例としてターゲットリストを作成する流れを簡単に説明します。

土木建築業で日本国内には企業数が約40万社ほどあると仮定します。全てを見てリストを作成することはできないため、帝国データバンクや商工会議所の持つ企業リストを土木建築業で絞り入手します。そこからアプローチすべき企業を絞るため、企業規模で100名以上、BIMを使うであろう詳細の業種、たとえば設計業に絞ります。それにより1万社に絞ることができたとします。それを全体のターゲットリストとします。

そこから企業規模が大きくBIMソフトをとにかく導入させたい、大手ゼネコンや1000名以上の企業規模の会社約500社に絞ります。それをTier1とします。そして、企業規模を500から999社に絞ると1500社となるため、それをTier2とします。最後に残った8000社をTier3とします。

Tierの分け方は、ビジネスの内容によっても変わりますが、上記はパレートの法則にのっとり、2割の会社が全体の8割の売上をもたらすという考えに基づきTier1、2で対象となる1万社に対して約2割としています。

最初にターゲットリストとTIerを分ける際には、あまり細かくしすぎずざっくりと設定をして走りながら調整をかけると良いでしょう。

顧客攻略シナリオの作成

顧客攻略シナリオはターゲットとなるユーザーを特定し、顧客が自社の製品やサービスを購入するまでのシナリオを主に次の4段階に合わせて作成します。

顧客の段階

  • 課題を認識
  • 解決策の模索
  • ソリューションの選択
  • アクション

まずは自社の製品やサービスを導入するユーザーがどのような課題を普段抱えていて、何を解決したいと考えているかを明らかにします。その後、ユーザーが抱えている課題をどのように解決をしようとするかを想像します。そして、解決策を見つけソリューション選定する際に何を気にして、どんな基準を持つかを考えます。最後に自社の製品、サービスのどこが一番の決め手になるかを検討することで、上記の4段階のシナリオを作成することができます。

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作成したシナリオの展開方法検討

作成したシナリオに基づき、コンテンツを作成と展開方法の具体的なプランを立てます。

コンテンツは主に、WEBの記事、動画、ホワイトペーパー、メディアタイアップ、編集記事の購入することにより作成もしくは、買うことで揃える計画を立てます。

コンテンツは顧客の段階によってタイプは別れます。課題の認識や解決策の模索の段階には集客コンテンツと呼ばれる、集客力のある有識者インタビュー記事や顧客の興味のありそうな記事をメディアから買います。自社の製品やサービスには遠くとも、とにかく人を集めるということが前半フェーズでは重要です。

ソリューション選定、アクションの段階にきた顧客にはいかに自社の製品、サービスが優れいているのかを知ってもらう必要あるため、自社WEBの記事や動画、ホワイトペーパーを通して事例や価格、他社製品との比較などのコンテンツを用意していくことが必要です。

コンテンツ展開方法は上記のコンテンツをそれぞれ、メールやWEBページ、DM、広告、セミナーを通していつ、どのタイミンングで顧客に発信をしていくか計画を立てます。

利用ツールへの落とし込み

コンテンツの展開は全員に一律に実施するのではなく、MAツールやCRMツールを組み合わせ、見込み顧客の興味関心や行動に合わせてパーソナライズをして展開していくことが重要です。

見込み顧客がシナリオのどの段階にいるのかを、顧客の行動から想定し、MAツールでスコアリングや行動によってマーケティングアクションを変更する設定をします。

MAツールを利用すれば次のようなことができます。

初回WEB訪問者には、オススメコンテンツをWEBのポップアップで表示。オススメのコンテンツを読んだユーザーにメルマガ登録を促す。メルマガでコンテンツを送り、読まれるごとにスコアを加点、スコアによってコンテンツを出し分ける。ある一定の点数、もしくは事例と製品価格ページをみたユーザーは、自動的にインサイドセールス、もしくは営業担当にリードが飛ぶ。といったことが可能になります。

持っているリストを上から順に当たるような営業活動から、企業の担当者の行動に合わせたアプローチがツールの活用により可能になるのです。ABMで着実に成果を上げていくためには、ツールを使いこなし見込み顧客に適切なタイミングと適切なメッセージの発信をしつ続けることが大切です。

アクション

ゴールを設定して、ターゲットを確定し、ターゲットに合わせた攻略シナリオを作成、シナリオに合わせたコンテンツを作成し、展開手法を検討し、利用ツールに落と仕込むことでアクションを開始することができるようになりました。

ここまで実施するのに、私の経験上最短でも3ヶ月、平均では6ヶ月ほどの時間はかかります。また開始後も営業担当にどの基準で見込み顧客をパスするのか、それが案件化につながっているのかのチェックを行い、改善をしていくPDCAサイクルを回すことも大切になってきます。

ABMは実施することで、案件が生まれる魔法の手法ではないので、日々コンテンツやシナリオを顧客の行動データや営業のフィードバックをもとに改善し続け、アップデートされるMAツールやCRMツール、分析の手法も取り入れ精度を上げていく必要があります。続けることは大変ですが、PDCAのサイクルを回すことで着実に成果を得ることができ、可視化もすることができるので、意味あるマーケティング活動ができているという実感を得やすい手法と言えます。

参考

よりABMの歴史、考え方、実践方法を知りたい方のオススメ図書です。のやん先生でお馴染みシンフォニーマーケティング庭山氏の著書です。


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