BtoBマーケティングにおけるカスタマージャーニーの作り方はこちらで解説いていますが、この記事では多くの企業が直面する、カスタマージャーニーの罠について実際に私が経験をもとに解説します。
ジャーニーで描いたシナリオ通りになる顧客が少ない
「ペルソナを描き、ペルソナごとにカスタマージャーニーを作り、コンテンツをメディアやオウンドメディア、セミナーで展開をしてMAツールとCRMで結果を追う仕組みを作るまでは良かった...」
実際にシナリオを回してみると、実際のところは「コンテンツに全く触れずに受注する」、「認知のコンテンツをみてすぐ受注する」、逆に「キレイにシナリオ通りに来ているのに案件化しない」ということが発生してカスタマージャーニー自体意味がない。手間もかかるし辞めた。という企業の担当の方と多く話をしてきました。
そこには3つの共通点がありました。
- 本当に購買にいたる行動がまちまち
- ちゃんとトラッキングできていない
- 最初に仮説でジャーニーを描いているのに、分析・検証せず表面的な数字で意味がないと判断している
本当に行動がまちまち
購買行動が本当にまちまちで、傾向が全く出ない商材は確かにあると思います。経験した中では、コモディティ化した価格競争が激しい製品サービスに起こりやすいと感じます。
例えば、低価格のパソコン、スマホなどはその傾向を感じました。パソコンやスマホは、それら単体で利用ユーザーのニーズを満たすのでなく、アプリやソフトウェアなどがあり、全体の体験でニーズを満たしています。なので、ペルソナを立ててもユーザが普段抱えている課題もまちまちで、そこからパソコンやスマホの購入に結びつけるのは難しかったです。
パソコンやスマホの場合、壊れた、もしくは経年劣化で2-3年で買い替えを迎えます。無理にジャーニーを作って、シナリオに当てはめようとせず、買い替えのタイミングで、「パソコンならこのメーカーが良い印象」というブランド想起を高めることが、ひとつの手段であると考えます。
ちゃんとトラッキング出来ていない
これもよくあるあるです。
ジャーニーの評価をするには、顧客を1つのIDで、最初の接触から受注までのトラッキングする必要があります。また、企業情報、部署、役職などの属性情報とWEBの行動、セミナー参加、商談情報も統合した管理が必要です。
実はセミナー情報はExcelで管理されているのみだった、MAツールを導入しているものの使いこなせていない、商談情報が紐づいていない、営業が情報をCRMに入れていなかったなどにより、ちゃんと計測が出来ていなかったということはよくおこります。
そういった場合には最初から理想を追い求めすぎずに、「WEBコンテンツの回遊からまずはセミナーへの申込み、参加をしてもらう」というように仮説検証する場所を絞って、トラッキング対象も絞って小さな成功から作るようにすると良いでしょう。
表面的な数字で評価してしまう
アナリティクスで見るような、WEBアクセス数、資料ダウンロード数、セミナー参加数、アポ数、商談数などの俯瞰的な情報のみで、判断をしている。特に、広告でWEBに大量に連れてきたもののその後の、資料ダウンロードやセミナー参加につながらないためにカスタマージャーニーが意味がないと判断することもよく起こります。
Google Analyticsを見慣れていると、PV数やUU数、遷移数に見慣れているために、よく起こりがちです。
きちんとデータをみてみると、全く商談に繋がっていないわけでなく、特定の業界や役職、職種の人は想定通りのシナリオ通りの動きをしていることがわかる時があります。つまりは、最初においているターゲットが広すぎるもしくは、集客を闇雲に実施しすぎていることが問題ということもあるのです。
そのため「カスタマージャーニーを作っても意味がない」と俯瞰的な数字で判断するのでなく、深くデータを見ることで何が機能していなくて、何が機能しているのかを把握した上で、評価や次の判断を下すべきです。
コンテンツを作れない
カスタマージャーニを作成した後に必要になるのが、コンテンツの制作です。最初はいいのですが、少し時間が経つとコンテンツを作り続けるリソースを確保できず形骸化してしまうという会社が多くあります。
自社製品、事例に関してのコンテンツを最初に量産していくものの、次第にそれらのネタがきれ、3−4ヶ月後には失速というパターンが多い印象です。
「記事を上げなくてはいけない」、「セミナーを開催しなくてはいけない」が先行しすぎると陥ってしまいがちです。
そんなとには思い切って、SEO対策を専門とする会社に記事制作やコンテンツ制作を依頼するというのも一つの手です。SEO系の記事制作だと1本あたり2万円〜5万円、インタビュー記事で7−8万円ほどで記事1本を作成することができます。
「お金をかけるのは...」と考える方もいると思いますが、社内の人だけで記事を作る、セミナーを企画するにもそこには工数がかかっています。慣れないことをして、時間かけている分もお金はかかっているのです。不得意なことは無理をしてやろうとせずに、得意な会社に任せてしまう方が結果的にコストは安くつく場合が多いです。
カスタマージャーニーを使いこなすには
カスタマージャーニーは作れば売上が勝手に上がる、魔法の手法ではありません。結局のところ、見込み顧客を理解して、自社の製品サービスの購入につなげる近道をするための一つの手段でしかありません。
カスタマージャーニーは計画です。一度作ったら、その計画通りにコンテンツを作成し、記事や資料、セミナーとして展開をして、接触した人の行動や実際の声を聞きながら、うまく機能ところは続け、機能きなかったことは改善し続ける。それがカスタマージャーニを使いこなすため有効な手段です。
カスタマージャーニーは古いという話もありますが、私自身は決して古いとは思いません。間違った理解をして、間違った利用をしていることで、カスタマージャーニーは機能しないというバイアスがかかり、新しい理論に飛びついているというパターンが多いのではないかと思います。
今一度、自社での使い方、評価の仕方、落とし込みの仕方を見直してみてはいかがでしょうか?
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